M&Aにかかる費用はどのくらい? 主な費用の内容や負担する企業について解説
M&Aでは、企業そのものや事業が売買の対象であり多額のお金が動くことになります。買収するための代金、手数料など、費用の規模が大きいため、事前に見積もりを行うなどしてしっかり把握しておかなければなりません。
結局のところ買収の対象になる企業や事業により金額は大きく異なるのですが、大まかにでも費用の種類や金額の相場を知っておくことが大事となります。これらにつき当記事で紹介をしていきますので、M&Aに興味のある方はご一読ください。
M&A費用の全体像
M&Aにかかる費用は定額ではありませんし、費用の種類も状況により異なります。
どのような企業を、どのようにして買い取るのか、どの専門家や仲介業者を利用するのか、どのようなサポートをしてもらうのか、さまざまな事情が絡み合って費用は定まっていくものです。
ただ、多くのM&Aで共通して発生する費用もあります。例えば次のような費用です。
主な費用の種類 |
費用の内容と負担する企業 |
---|---|
買収費用 |
・買い手が支払う費用 ・売り手に支払う対価のこと |
仲介手数料 |
・買い手、売り手、いずれにも負担の可能性がある費用 ・M&Aのプロセスを専門の仲介業者に依頼するための費用 ・相談料や着手金、成功報酬、中間報酬などが含まれる |
デューデリジェンス費用 |
・主に買い手が支払う費用 ・相手企業の調査を行うために支払うもの |
税金 |
・売り手が法人税等を支払う ・買い手側は消費税を支払うことがある |
では、これらの費用それぞれを説明していきます。
買収費用
M&Aでかかるもっとも主要な費用が「買収費用」です。
株式、事業などを買い取る側が、売り手の企業に対して支払うことになります。
この買収費用の金額は、買収しようとする企業や事業によって大きく異なります。その他の費用についても状況により異なるものですが、買収費用は特に一般的な相場というものを算定するのが難しいです。数千万円、数億円、数十億円、それ以上になることもあります。
そこで買い手は、売り手との交渉やM&Aの仲介業者、アドバイザーなどとの相談を進めながら費用の見積もりを出す必要があります。また、後述のデューデリジェンスの結果によっても金額は左右されます。
企業価値、事業の価値を算定する方法もいくつかあるのですが、主要な考え方として次の3つを挙げることができます。
①マーケット・アプローチ
株式市場における価値を基準に買収費用を算定する方法。買収対象の企業と照らし合わせて、類似する企業の取引をベースとして、評価を行う。
②インカム・アプローチ
将来獲得できる見込みの配当、利益を評価することで買収費用を算定する方法。収益性の高さに着目して評価を行う。
③コスト・アプローチ
買収対象の企業が持つ資産・負債に着目し、企業の価値を評価する方法。将来性についての評価は難しくなるが、数値から客観的な評価が可能。
仲介手数料
M&Aは買い手と売り手だけで進めることも不可能ではありませんが、通常、仲介業者が間に入って円滑な買収手続をサポートすることになります。
仲介手数料が発生してしまいますが、M&Aは当事者双方にとって重大な取引であり、できるだけ判断を誤らないように、慎重に検討を行うことが大事です。そのため仲介手数料についてもM&Aで必要な費用と認識しておくと良いでしょう。
そして仲介手数料と一口にいっても、費目は多岐にわたり、仲介業者のサービス内容によっても費目およびその金額は異なります。以下にはごく基本的な内容を紹介します。
相談料 |
M&Aについての相談に対する費用。正式な依頼を出す前段階の相談に対して発生することが多い。時間単位で1万円程度発生するケースもあれば、相談については無料で対応していることもある。 |
---|---|
着手金 |
着手金は、M&Aについてのサポートを依頼するときに発生する費用。結果に応じて発生する成功報酬とは異なり、その後の結果とは関係なく最初に金額が確定する。数十万円~数百万円と、事案により金額は大きく異なるが、特に大きな事案でなければ100万円程度になることもある。 着手金を無料にして、その分成功報酬で調整する仲介業者も多い。 |
成功報酬 |
成功報酬は依頼したM&Aのサポートが完了したとき、その結果に応じて金額が定まる費用のこと。買収費用に対応して金額が定まることが多いため成功報酬の金額もバラバラだが、「買収費用の1~5%が相場」ということもできる。 買収費用が小さいほど成功報酬の負担割合が大きくなる傾向にある。 |
中間報酬 |
M&Aの取引において基本合意書が交わされたタイミング等で発生する費用。数十万円~数百万円の固定で定められていることもあれば、成功報酬の〇%と設定されていることもある。 なお、中間報酬を取らない仲介業者も少なくない。 |
デューデリジェンス費用
M&Aを実行すると、他社が自社の一部となり、事業規模や組織を拡大することができます。これによりさらなる発展を目指すことができるのですが、その反面、他社の悪い側面を引き継いでしまうというリスクも秘めています。
そこでM&Aでは、そのリスクを評価する過程として「デューデリジェンス」を行うことが大事になります。要は相手方企業を調査する手続です。
財務や税務、法務、人事など、相手方企業について隅々まで調べていくことが大事です。デューデリジェンスの効果を最大化するには、調査を行う方に高い専門的知見が備わっていなければなりません。そこで調査項目に応じて弁護士や税理士、公認会計士などのプロに依頼を出すことが多いです。
規模の小さな企業を対象とする場合、デューデリジェンス費用の相場は数十万円程度です。しかし規模が大きくなってくると、数百万円程度の費用が必要になってくるでしょう。
税金
事業から発生した利益に対して課税がなされるように、M&Aの取引に対しても課税されることがあります。買収費用など、これまで紹介してきた費用の多くは買い手による負担が大きかったですが、税金については主に売り手側に割合大きな負担がかかります。
まずは「株式譲渡」の例で考えてみましょう。
株式譲渡とは、「買収対象の企業の株式を買い取る」というM&Aの一手法です。売り手目線だと、株式を譲渡することになります。売り手はこの譲渡の際に買収費用を受け取ることになりますので、譲渡費用等を除いた譲渡所得を得ることになり、これに対して課税がなされます。買収費用が大きく譲渡所得が大きくなるほど売り手には大きな税負担が発生するのです。
次に「事業譲渡」についてです。
事業譲渡とは、「企業の一部の事業またはすべての事業を買い取る」というM&Aの一手法です。株式譲渡とは異なり、法人税だけでなく消費税も課税されます。ただし消費税については買い手負担です。
その他の費用
主な費用について紹介してきましたが、その他にも状況により発生する費用はいくつかあります。例えばM&Aに際して不動産の所有権移転登記が必要になることもあるでしょう。商業登記の手続が必要になることもあり、その場合は登記費用が発生します。
また、株券発行をしている企業の株式を買い取るとき、売り手は買い手に株券を渡すこととなり、その際に発行手数料も発生します。
一つひとつの費用が大きくなくても、細かい費用が積み重なって想定以上に負担がかかってしまうこともありますので要注意です。
専門家や仲介業者の選定がポイント
「どの企業を買収するか」がM&Aの取引金額を大きく左右するのは当然ですが、これに加えて「どの専門家・仲介業者を利用して取引を進めていくか」も重要なポイントです。買収対象が同じ企業であっても、仲介やデューデリジェンスの依頼先によって費用全体の金額が変わってくるためです。
ただしコストだけに着目すべきではなく、サービス内容、サポートの質なども評価した上で全体としてのコスパを考えましょう。その際、過去の実績を見てみることがおすすめです。どのような成功事例を持っているのか、Webサイトで確認、あるいは直接聞いてみるなどして依頼先の選定材料の1つにします。
また、料金体系が不明瞭だと後から追加で予想外の費用が発生するなどのリスクがありますし、依頼費用について事前に詳しく聞いておくことも大事です。
KNOWLEDGE
当事務所が提供する基礎知識
-
M&Aにおけ...
M&Aを行う際に、企業の価値を測るものとして企業価値と株式価値という言葉が出てきます。この2つは似てい […]
-
後継者問題をM&am...
事業承継を行う際後継者が決まらないと事業をどのように承継していくのか、そしてどのように事業を続けていくのかが定 […]
-
m&aにおけ...
M&Aをする際に企業にどのくらいの価値がつくかを明確にするためには企業価値査定が必要です。企業価値査定とは、会 […]
-
マーケットアプローチ...
M&Aをする際に企業にどのくらいの価値がつくかを明確にするためには企業価値査定が必要です。企業価値査定とは、会 […]
-
インカムアプローチの...
M&Aをする際に企業にどのくらいの価値がつくかを明確にするためには企業価値査定が必要です。企業価値査定とは、会 […]
-
メザニンファイナンス...
資金調達の方法として、デッドファイナンスやエクイティファイナンス、アセットファイナンスといった方法の他に「メザ […]
KEYWORD
よく検索されるキーワード
ABOUT
M&Aとは
「M&A」と言われても、まだまだ一般的にはよく知られていないのではないでしょうか?テレビや新聞の経済ニュースでは頻繁に目にするようにはなりましたが、まだまだ何のことやらわからない方が多いかと思います。
あるいは言葉の意味は人から聞いたり、本やネット等でなんとなく知っているが、具体的にどういうことなのか知らない人が多数かと思います。それも当然のことです。なぜなら、金融機関やM&Aを手掛けるコンサルティング会社以外の事業会社にとっては、M&Aというのは企業にとっての一大イベントでありますし、むしろほとんどの企業は全く縁のないことも多いからです。したがって、M&Aが一般的に知られるはずもないのです。
そこで、M&Aとは何なのか、またM&Aにはどのような手法があり、具体的にどのようなことなのかを、わかりやすくご説明したいと思います。
M&Aの正式な名称は「Mergers and Acquisitions」であり、M&Aとはこれを略した言葉です。Mergersというのは「合併」、Acquisitionsというのが「買収」のことであり、直訳すると「企業の合併と買収」となります。
一般的に「M&A」と言うと、二つ以上の会社を一つの会社としてくっつける、専門的に言うと複数の法人格を一つの法人格に結合する合併およびある会社の全株式を買い取ってしまう買収といった狭義のM&Aだけでなく、ある企業の特定の事業だけを譲渡する営業譲渡や、資本提携(100%ではない株式の取得・増資の引受)なども含めた、広義の資本的取引のことを包括しています。
MERIT&DEMERIT
M&Aのメリット・デメリット
売り手のメリット・デメリット
1. 従業員の確保
現在、日本の中小企業においては後継者不在により、いつまで事業が続けられるか悩んでいる中小企業経営者が多いです。後継者不在が続いた場合、廃業に追い込まれる企業も少なくないでしょう。そうなってしまうと、従業員やその家族、取引先に大きな影響を及ぼしてしまいます。こうした中小企業がM&Aを行うことで、会社を存続させることができ、ひいては従業員の雇用を守ることができます。
また、M&Aの相手先によっては、その会社のネットワークやノウハウを利用することで、再スタートを切ることができるので、後継者不在に悩んでいる中小企業にとっては、きわめて有効かつ迅速な解決を図るための選択肢となります。
2. 企業体質の強化につながる
M&Aを実行しようという買い手会社は、売り手会社に比べると、資金力、人材などの事業基盤の面で安定した企業となります。
M&Aで事業基盤のしっかりした企業との確固とした関係を築くことができれば、今まで不足していた信用力が補完され、資金調達が楽になることもありますし、また相手先のネットワークを利用することで販路を拡大することができるなど、いわゆる事業シナジーの活用ができ、収益力の強化につながることが期待できます。
3. 売り手の経済的メリット
たとえば後継者が不在のため、自社を廃業・清算する場合、現金や有価証券といった金融資産以外の資産である在庫や機械設備などは換金することが困難なばかりか、往々にして処分費用が嵩み、会社をたたむのに残金が残るどころか、追加での費用の支払いが出てしまう可能性も高いものです。
しかしながら、M&Aを実行する企業にとっては、そういった在庫や機械設備は今後の事業遂行にとって価値となる資産となるばかりか、場合によっては収益力を評価していわゆるのれん価値をつけて株式を買い取ってくれることがあります。
この場合、廃業・清算にかかる手間が、M&Aで軽減されるばかりか、場合によっては手元に残る現金が多くなることもあり、引退後の生活のために大きなメリットとなることでしょう。
もし詳細がお聞きになりたい方は、当社まで、ぜひお問い合わせください。
買い手側のメリット・デメリット
1. 既存事業の拡大や事業の多角化ができる
経済が成熟してくると、既存事業における市場規模の拡大というのは自然には見込めなくなるものです。したがって、自社の事業領域においては、他社の市場シェアを奪うほか売上の拡大が見込めなくなってきますが、これは簡単な話ではありません。
そこで自社の経営戦略やニーズにマッチした企業とのM&Aを実行することによって、自社の事業規模を拡大し、市場シェアを一気に拡大することが可能となります。
また、自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することができるというメリットがあります。
2. 時間を買うことができる
M&Aを実行することは、自社で一から経営資源である「ヒト・モノ・カネ」を投入して、新しい事業を立ち上げる時間を省くことができ、お金で「時間を買う」ことができるわけです。
3. 失敗のリスクを軽減できる
一般的に自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。
そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することが できるというメリットがあります。
OFFICE
会社情報
当社は、会計士および税理士のネットワークをベースに設立された会社です。
これまで、多数のM&Aの経験に裏付けられた専門的ノウハウおよびネットワークを元に顧客企業にとって最適なM&Aを実現することが使命であります。
具体的なサービスとして、最も重要なものは、事業承継及び企業規模の拡大を目指している経営者様にとって、最も効果的なM&Aの相手先を見つけ、ご紹介する仲介業務であります。M&A仲介の難しい点は、なんといっても「相手先企業情報の入手及び両者のマッチング」です。
この仲介業務、すなわち出会いがすべてといっても過言ではありません。他社では、どうしても成約ばかりに目を向けて、成約するならどこでもいい、といったことがありますが、当社はこの仲介業務にもっとも力を入れ、またこの仲介において皆様の事業の発展に尽くしていきたいと考えております。
会社名 | 株式会社日本企業評価会計事務所(旧M&Aプロ株式会社) |
---|---|
設立 | 平成28年10月5日 |
事業内容 | 企業買収および合併の仲介業務など |
住所 | 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-8-10 宮川ビル4階 |
代表取締役 | 近 暁 |