M&Aの失敗要因
M&Aは、すでに普及の段階を過ぎており、今やすべての企業がその実行を念頭に置くべき重要な企業戦略の一つとなったかと思います。
しかしながら、それだけ重要なものにもかかわらず、また世の中にはM&Aに関わる人間が増え、金融機関や弁護士、会計士、コンサルタントなどの多様なサービスが提供されているにもかかわらず、実際にはかなりの割合で失敗に終わっていると言われています。M&Aは大企業から中小企業まで幅広く実施されており、何を持って失敗というかも定義がはっきりしておりませんが、一説には5割から7割が失敗だとも言われているという調査があることをご存知でしょうか。
M&Aは、膨大な時間や労力を費やします。また金銭的な費用も相当額になりますが、期待した結果が得られなかった、というのが大半というのは衝撃的なことです。
具体的に、M&Aが失敗した、というのはどういう状態なのかの定義は難しいのですが、企業活動である限り、やはり投資した金額に見合う収益が得られなった、ということに尽きるかと思います。
期待した収益が得られなかったことを失敗と考え、以下ではどういった要因によりM&Aが失敗したのかを、これまでの経験から述べていきたいと思います。膨大な時間と労力、費用が掛かるM&Aを失敗に終わらせないために、事前に失敗となるべき要因をしっかり認識していく必要があると思います。
M&Aが失敗する原因
その1. 高い買い物をしてしまうこと
失敗する要因として第一に考えられるのは、「買収先の過大評価」です。基本的に売り手が売り切りの場合、過小評価により大事な会社の価格が安すぎた、ということもありますが、それは失敗ではあるものの、その後のリスクはありません。しかしながら、会社という生き物を買い取る以上、買い手は収益が出ない場合、ある意味永遠に損失を負担していくことになるわけで、やはり買収先を過大評価する、というのが最大のリスクでしょう。これは商売の基本ですが、やはり買う時は少しでも安く、ということに尽きます。
企業価値がいくらになるのか、というのはM&Aにおいて最も重要なことかと思います。企業価値は基本的には、会社の財務諸表、すなわち貸借対照表と損益計算書を基礎として算定されます。今時点で、いくらの財産価値があるのか、これまでどれくらいの利益を上げてきたのか、がこの財務諸表から分かるのです。財務諸表は、粉飾決算をしていない限り、会社の財務状態、経営成績を適切に表しており、一定のルールで数字が計上されているので、会計士などに頼んで企業価値を見てもらった場合、ほぼ同じ結果が出ることになるでしょう。それほど主観的な要素がないからです。
しかし、M&Aにおいては財務諸表だけで企業価値を判断するわけではありません。財務諸表に計上されていない資産、例えば技術であったり、販売ネットワークであったり、人材の質や、はたまた社長の人的素質など、そういった要素も多分に考慮されます。買い手としては、自分たちがこの会社を経営すれば、今よりもっと儲けることができる!と判断し、ついつい高値で買収をしてしまったものの、高額の買収費を埋め合わせるほどの利益が得られないことはよくあることです。
したがって、そうした営業権やシナジー効果などの目に見えない資産については、慎重に調査し、保守的な観点から買収対象企業を見ていく必要があると言えましょう。
その2. 事前の調査が甘かった
よく、M&Aにより事業拡大、M&Aにより企業の成長を実現、などという見出しのコラムを見かけます。確かに、M&Aにより事業を拡大させたり、売上を成長させた会社はたくさんあります。というより、今はM&Aを積極的に活用しないと、競争の激しいビジネスの世界では生き残っていけないでしょう。
しかしながら、M&Aをすることが目的なのではありません。M&Aをすれば、必ず事業が拡大し、利益が確保されることはないのです。M&Aが目的化した場合、M&Aを急いで実行するあまり、事業計画が達成できなかったり、全くシナジー効果が出せなかったという状態に陥ることがよくあります。
以前、関東を中心に飲食店を経営する会社が、地域的な事業拡大をするために関西に地盤を置く同業他社を買収しました。買い手側は、自社のセントラルキッチンを持っているため、単純に店舗数さえ増えれば売上が拡大し、さらにコスト削減もできると考え、買収先の関西の店舗について、それまでの仕入れ先との取引を打ち切り、自社の食材を卸すことにしました。しかしながら、関東と関西の微妙な味の違いや、人気の食材などを事前に調べていなかったために、買収後に急速に売上が減少してしまったのです。一度離れてしまったお客さんを再度呼び戻すのは新規に店舗を開くより難しいものです。その後、二度と売上は回復しませんでした。
また、他の飲食店は海外で日本食が人気だと聞いて、地場の日本食レストランを買い取り、事業展開を始めました。その会社は、日本では低価格が売りで、安く日本食を提供するというコンセプトで進出したのですが、なぜか売上は上がりませんでした。何故かというと、海外では、「日本食は高価なもの」なのであり、富裕層が接待等で食べるものだったのです。同じレベルの食材を提供していても、高い方に客が流れ、見事に低価格戦略が失敗したのです。
もちろんこれらの例は少し極端なのですが、M&Aというのは「自社が持っていない資産を、他社から買い取ること」です。逆に言うと、自社の知らない分野に進出する行為であり、たとえ同業であっても微妙な地域性の違いや企業戦略のズレ、が経営が統合された際に失敗の要因となっていくのです。今では大分なじんできましたが、大手の銀行ですら、統合の当初はシステムの不具合や、人員の流出などのM&Aの負の側面が顕在化していたのです。M&Aを実行するに当たっては、拙速にM&Aを実行することばかりを念頭に置くのではなく、事前に調査をきちんと行い、綿密な事業計画を策定することが肝要かと思われます。
その3. 経営の統合の失敗
M&Aを実行した後、相手先企業との経営の統合が失敗してしまうことがあります。 経営の統合とは、M&Aが完了したのち(ポストM&A)においてもっとも難しいプロセスとなります。M&Aの事前調査及び契約・実行まで(プレM&A)は、専門家も多くおりますし、また手続面でも法的・会計的にかなり整備されてきているのですが、ポストM&Aには教科書がなく、またこの分野を専門に手掛けるプロも少ないのです。まさに経営者及び社員全員で一丸となってクリアしていくべき課題なのです。
経営の統合とは何か、というと、まずは人員の統合です。それまで別の会社にいた人間たちが、ある日を境に同じ釜の飯を食う仲になるわけです。社風も違えば、仕事に対する意識も違うし、平均年齢や地域性など純然たる人的パーソナリティの違いもありますし、また社内における手続きや規程なども全く違っているので、これを同じ会社として統合するのは実に骨の折れる作業なのです。会社統合により、場合によっては重複している部門を統合し、人員の削減などのキツイこともしなければならなくなり、社内が不穏な空気に包まれ、人材流出が続く、なんてことはよく聞く話です。
あとは、保有しているシステム、すなわち会計システムや販売管理システムが違っていたりすることでオペレーションに問題が生じ、最悪の場合には得意先に迷惑が掛かって、売上が減ってしまった、なんていうこともあるのです。
他にも、実に多様なことが起きるのがポストM&Aですが、これは事前には完全に予測することができません。多様な業種、企業が存在する以上、これはケースバイケースで対応していくしかないのです。経営者の真の実力が試される局面と言っていいでしょう。
以上のような失敗を避けるためには、やはりM&Aの経験豊富な専門家に、過去の経験からアドバイスをいただくことが重要となります。詳細をお聞きしたい経営者の方は、ぜひ一度当社にお問い合わせください。
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M&Aとは
「M&A」と言われても、まだまだ一般的にはよく知られていないのではないでしょうか?テレビや新聞の経済ニュースでは頻繁に目にするようにはなりましたが、まだまだ何のことやらわからない方が多いかと思います。
あるいは言葉の意味は人から聞いたり、本やネット等でなんとなく知っているが、具体的にどういうことなのか知らない人が多数かと思います。それも当然のことです。なぜなら、金融機関やM&Aを手掛けるコンサルティング会社以外の事業会社にとっては、M&Aというのは企業にとっての一大イベントでありますし、むしろほとんどの企業は全く縁のないことも多いからです。したがって、M&Aが一般的に知られるはずもないのです。
そこで、M&Aとは何なのか、またM&Aにはどのような手法があり、具体的にどのようなことなのかを、わかりやすくご説明したいと思います。
M&Aの正式な名称は「Mergers and Acquisitions」であり、M&Aとはこれを略した言葉です。Mergersというのは「合併」、Acquisitionsというのが「買収」のことであり、直訳すると「企業の合併と買収」となります。
一般的に「M&A」と言うと、二つ以上の会社を一つの会社としてくっつける、専門的に言うと複数の法人格を一つの法人格に結合する合併およびある会社の全株式を買い取ってしまう買収といった狭義のM&Aだけでなく、ある企業の特定の事業だけを譲渡する営業譲渡や、資本提携(100%ではない株式の取得・増資の引受)なども含めた、広義の資本的取引のことを包括しています。
MERIT&DEMERIT
M&Aのメリット・デメリット
売り手のメリット・デメリット
1. 従業員の確保
現在、日本の中小企業においては後継者不在により、いつまで事業が続けられるか悩んでいる中小企業経営者が多いです。後継者不在が続いた場合、廃業に追い込まれる企業も少なくないでしょう。そうなってしまうと、従業員やその家族、取引先に大きな影響を及ぼしてしまいます。こうした中小企業がM&Aを行うことで、会社を存続させることができ、ひいては従業員の雇用を守ることができます。
また、M&Aの相手先によっては、その会社のネットワークやノウハウを利用することで、再スタートを切ることができるので、後継者不在に悩んでいる中小企業にとっては、きわめて有効かつ迅速な解決を図るための選択肢となります。
2. 企業体質の強化につながる
M&Aを実行しようという買い手会社は、売り手会社に比べると、資金力、人材などの事業基盤の面で安定した企業となります。
M&Aで事業基盤のしっかりした企業との確固とした関係を築くことができれば、今まで不足していた信用力が補完され、資金調達が楽になることもありますし、また相手先のネットワークを利用することで販路を拡大することができるなど、いわゆる事業シナジーの活用ができ、収益力の強化につながることが期待できます。
3. 売り手の経済的メリット
たとえば後継者が不在のため、自社を廃業・清算する場合、現金や有価証券といった金融資産以外の資産である在庫や機械設備などは換金することが困難なばかりか、往々にして処分費用が嵩み、会社をたたむのに残金が残るどころか、追加での費用の支払いが出てしまう可能性も高いものです。
しかしながら、M&Aを実行する企業にとっては、そういった在庫や機械設備は今後の事業遂行にとって価値となる資産となるばかりか、場合によっては収益力を評価していわゆるのれん価値をつけて株式を買い取ってくれることがあります。
この場合、廃業・清算にかかる手間が、M&Aで軽減されるばかりか、場合によっては手元に残る現金が多くなることもあり、引退後の生活のために大きなメリットとなることでしょう。
もし詳細がお聞きになりたい方は、当社まで、ぜひお問い合わせください。
買い手側のメリット・デメリット
1. 既存事業の拡大や事業の多角化ができる
経済が成熟してくると、既存事業における市場規模の拡大というのは自然には見込めなくなるものです。したがって、自社の事業領域においては、他社の市場シェアを奪うほか売上の拡大が見込めなくなってきますが、これは簡単な話ではありません。
そこで自社の経営戦略やニーズにマッチした企業とのM&Aを実行することによって、自社の事業規模を拡大し、市場シェアを一気に拡大することが可能となります。
また、自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することができるというメリットがあります。
2. 時間を買うことができる
M&Aを実行することは、自社で一から経営資源である「ヒト・モノ・カネ」を投入して、新しい事業を立ち上げる時間を省くことができ、お金で「時間を買う」ことができるわけです。
3. 失敗のリスクを軽減できる
一般的に自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。
そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することが できるというメリットがあります。
OFFICE
会社情報
当社は、会計士および税理士のネットワークをベースに設立された会社です。
これまで、多数のM&Aの経験に裏付けられた専門的ノウハウおよびネットワークを元に顧客企業にとって最適なM&Aを実現することが使命であります。
具体的なサービスとして、最も重要なものは、事業承継及び企業規模の拡大を目指している経営者様にとって、最も効果的なM&Aの相手先を見つけ、ご紹介する仲介業務であります。M&A仲介の難しい点は、なんといっても「相手先企業情報の入手及び両者のマッチング」です。
この仲介業務、すなわち出会いがすべてといっても過言ではありません。他社では、どうしても成約ばかりに目を向けて、成約するならどこでもいい、といったことがありますが、当社はこの仲介業務にもっとも力を入れ、またこの仲介において皆様の事業の発展に尽くしていきたいと考えております。
会社名 | 株式会社日本企業評価会計事務所(旧M&Aプロ株式会社) |
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設立 | 平成28年10月5日 |
事業内容 | 企業買収および合併の仲介業務など |
住所 | 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-8-10 宮川ビル4階 |
代表取締役 | 近 暁 |