IPOによる事業承継のメリット・デメリットを紹介
事業承継は、経営者ならいつかは考えないといけない大きな課題です。
小規模な非上場会社であれば親族内で株式を引き継いでバトンタッチするケースも多いですが、「IPOによる事業承継」という選択肢もあります。
自社株を市場に公開して、自由に売買できるようにするのです。
検討にあたっての参考となるよう、ここではその代表的なメリットとデメリットについてそれぞれ4つずつ紹介します。
4つのメリットについて
IPOによる事業承継のメリットは次のように大別できます。
- 資金調達しやすくなる
- 知名度や信用力の向上
- 人材が確保しやすくなる
- 従業員のモチベーションが上がる
それぞれ以下で見ていきましょう。
資金調達しやすくなる
IPOによって、大規模な資金調達もやりやすくなります。
自社の株式が証券取引所に上場され、不特定多数の投資家に株式を売却できるようになれば、一度に多額の資金を調達することも不可能ではなくなります。
これまでの資金調達の手法に1つ新たな手法が加わることで、金融機関からの借入だけに依存する必要がなくなるのは大きなメリットといえるでしょう。
知名度や信用力の向上
IPOによって企業の知名度が向上します。
厳しい条件をクリアしたこと、そして企業が広く認知されることで信用力も向上し、取引先もそれ以前より広げやすくなるでしょう。
さらには、その影響を受け、「金融機関からの評価も高くなって融資を受けやすくなる」「M&Aを行う際も優位な立場に立ちやすい」といった恩恵も期待できます。
人材が確保しやすくなる
事業承継にあたっては優秀な人材の獲得も大きな意味を持ちます。
後継者候補を増やし、後継者候補の教育をしていくためにも、まずは人が必要です。ところが知名度も信用力も乏しい企業にはなかなか人も集まりません。この点、「上場している」という事実はプラスの印象を与えやすく、今後の成長に関しても期待感が持たれやすいです。
その結果、人材確保も行いやすくなり、より良い形での事業承継が進めやすくなります。
従業員のモチベーションが上がる
従業員離れを防ぎ、さらに質を高めていくには、「働くモチベーションが高まること」が大切です。
自らが働く企業がIPOという大きな目標を達成できると、誇りを持てますし、企業への帰属意識をより強く感じるようになるでしょう。
また、IPOによって企業の知名度やブランドイメージが向上することで、従業員は自社の製品やサービスにも自信が持てるようになり、仕事へのモチベーションを高めることができます。
また、IPOを機に、ストックオプションなどのインセンティブ制度を導入することも可能となります。企業価値の向上と株価上昇が従業員の利益に直結することから、従業員のモチベーション向上に繋がりますし、後継者となる経営者にもこの制度の導入は効果的です。
4つのデメリットについて
IPOを目指すのは簡単なことではありません。例えば次のようなデメリットも理解のうえ、取り組む必要があります。
- 準備に時間とコストがかかる
- 社会的責任が大きくなる
- 株主総会対策や株式事務の負担が増す
- 想定しない投資家による買収リスクがある
具体的にどのような問題があるのか、見ていきましょう。
準備に時間とコストがかかる
IPOの準備には多くの時間を要します。一般的には、上場準備開始から実際に上場するまでに2~3年程度の期間が必要とされていますし、その期間中に「内部体制の整備」「財務状況の改善」へ取り組まないといけません。
多大な労力を要する作業ですし、その過程では大きなコストも発生することでしょう。
そのような負担を負ってまでIPOによる事業承継を目指す必要があるのかどうか、よく考える必要があります。
社会的責任が大きくなる
IPOにより企業の社会的責任は大きくなります。
まず、金融商品取引法に従い所定の情報開示を行わないといけません。
情報開示の準備や適切な情報管理体制の構築など、企業の負担は大きく増してしまいます。また、法令違反に対する監視もかなり厳しくなります。
そして法令上の義務ではないものの、社会のニーズを汲んだ取り組みの実践も重要になってきます。
環境問題や社会貢献活動など、求められていることに応えることが企業価値の向上に影響し、さらなる発展へとつながるのです。
IPOによって事業承継をする場合は、後継者が負う責任が現状から変わる、という点にも目を向けなくてはなりません。
株主総会対策や株式事務の負担が増す
IPO達成の恩恵は大きなものですが、達成までにかかる苦労のほか、その状態を維持するための負担が発生することも忘れてはいけません。
例えば株主総会に向けた準備がこれまでより大変になりますし、株式事務の作業量も増えてしまいます。これらの負担増は、事業承継後の経営体制に大きな影響を与えます。特に中小企業の場合、これまで株主総会や株式事務に慣れていないことが多く、対応に苦慮することも考えられます。
想定しない投資家による買収リスクがある
IPOにより多くの出資が期待できるようになりますが、株式が買われるということは、自社の経営権を買われるということも意味しています。
そのため想定しない投資家による「敵対的買収」のリスクが起こり得ます。買収者が株式を大量に取得し、経営権が奪われる可能性もゼロではありません。既存の経営陣を残しつつ事業承継を進めたいと考えていても、想定とは異なる形で事業承継が行われてしまうおそれもあるのです。
慎重な検討と専門家の活用が重要
専門家の意見を参考にしながら、時間をかけて慎重に判断することが重要です。企業の将来を見据え、最適な事業承継方法を選択しましょう。
例えば同族経営を維持したいような企業にIPOはあまり適していません。そのほかにも各社さまざまな事情があると思われますので、事業承継のこと、IPOのことに詳しい専門家を頼り、どう取り組むべきかアドバイスをもらうと良いでしょう。
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M&Aとは
「M&A」と言われても、まだまだ一般的にはよく知られていないのではないでしょうか?テレビや新聞の経済ニュースでは頻繁に目にするようにはなりましたが、まだまだ何のことやらわからない方が多いかと思います。
あるいは言葉の意味は人から聞いたり、本やネット等でなんとなく知っているが、具体的にどういうことなのか知らない人が多数かと思います。それも当然のことです。なぜなら、金融機関やM&Aを手掛けるコンサルティング会社以外の事業会社にとっては、M&Aというのは企業にとっての一大イベントでありますし、むしろほとんどの企業は全く縁のないことも多いからです。したがって、M&Aが一般的に知られるはずもないのです。
そこで、M&Aとは何なのか、またM&Aにはどのような手法があり、具体的にどのようなことなのかを、わかりやすくご説明したいと思います。
M&Aの正式な名称は「Mergers and Acquisitions」であり、M&Aとはこれを略した言葉です。Mergersというのは「合併」、Acquisitionsというのが「買収」のことであり、直訳すると「企業の合併と買収」となります。
一般的に「M&A」と言うと、二つ以上の会社を一つの会社としてくっつける、専門的に言うと複数の法人格を一つの法人格に結合する合併およびある会社の全株式を買い取ってしまう買収といった狭義のM&Aだけでなく、ある企業の特定の事業だけを譲渡する営業譲渡や、資本提携(100%ではない株式の取得・増資の引受)なども含めた、広義の資本的取引のことを包括しています。
MERIT&DEMERIT
M&Aのメリット・デメリット
売り手のメリット・デメリット
1. 従業員の確保
現在、日本の中小企業においては後継者不在により、いつまで事業が続けられるか悩んでいる中小企業経営者が多いです。後継者不在が続いた場合、廃業に追い込まれる企業も少なくないでしょう。そうなってしまうと、従業員やその家族、取引先に大きな影響を及ぼしてしまいます。こうした中小企業がM&Aを行うことで、会社を存続させることができ、ひいては従業員の雇用を守ることができます。
また、M&Aの相手先によっては、その会社のネットワークやノウハウを利用することで、再スタートを切ることができるので、後継者不在に悩んでいる中小企業にとっては、きわめて有効かつ迅速な解決を図るための選択肢となります。
2. 企業体質の強化につながる
M&Aを実行しようという買い手会社は、売り手会社に比べると、資金力、人材などの事業基盤の面で安定した企業となります。
M&Aで事業基盤のしっかりした企業との確固とした関係を築くことができれば、今まで不足していた信用力が補完され、資金調達が楽になることもありますし、また相手先のネットワークを利用することで販路を拡大することができるなど、いわゆる事業シナジーの活用ができ、収益力の強化につながることが期待できます。
3. 売り手の経済的メリット
たとえば後継者が不在のため、自社を廃業・清算する場合、現金や有価証券といった金融資産以外の資産である在庫や機械設備などは換金することが困難なばかりか、往々にして処分費用が嵩み、会社をたたむのに残金が残るどころか、追加での費用の支払いが出てしまう可能性も高いものです。
しかしながら、M&Aを実行する企業にとっては、そういった在庫や機械設備は今後の事業遂行にとって価値となる資産となるばかりか、場合によっては収益力を評価していわゆるのれん価値をつけて株式を買い取ってくれることがあります。
この場合、廃業・清算にかかる手間が、M&Aで軽減されるばかりか、場合によっては手元に残る現金が多くなることもあり、引退後の生活のために大きなメリットとなることでしょう。
もし詳細がお聞きになりたい方は、当社まで、ぜひお問い合わせください。

買い手側のメリット・デメリット
1. 既存事業の拡大や事業の多角化ができる
経済が成熟してくると、既存事業における市場規模の拡大というのは自然には見込めなくなるものです。したがって、自社の事業領域においては、他社の市場シェアを奪うほか売上の拡大が見込めなくなってきますが、これは簡単な話ではありません。
そこで自社の経営戦略やニーズにマッチした企業とのM&Aを実行することによって、自社の事業規模を拡大し、市場シェアを一気に拡大することが可能となります。
また、自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することができるというメリットがあります。

2. 時間を買うことができる
M&Aを実行することは、自社で一から経営資源である「ヒト・モノ・カネ」を投入して、新しい事業を立ち上げる時間を省くことができ、お金で「時間を買う」ことができるわけです。
3. 失敗のリスクを軽減できる
一般的に自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。
そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することが できるというメリットがあります。
OFFICE
会社情報
当社は、会計士および税理士のネットワークをベースに設立された会社です。
これまで、多数のM&Aの経験に裏付けられた専門的ノウハウおよびネットワークを元に顧客企業にとって最適なM&Aを実現することが使命であります。
具体的なサービスとして、最も重要なものは、事業承継及び企業規模の拡大を目指している経営者様にとって、最も効果的なM&Aの相手先を見つけ、ご紹介する仲介業務であります。M&A仲介の難しい点は、なんといっても「相手先企業情報の入手及び両者のマッチング」です。
この仲介業務、すなわち出会いがすべてといっても過言ではありません。他社では、どうしても成約ばかりに目を向けて、成約するならどこでもいい、といったことがありますが、当社はこの仲介業務にもっとも力を入れ、またこの仲介において皆様の事業の発展に尽くしていきたいと考えております。
会社名 | 株式会社日本企業評価会計事務所(旧M&Aプロ株式会社) |
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設立 | 平成28年10月5日 |
事業内容 | 企業買収および合併の仲介業務など |
住所 | 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-8-10 宮川ビル4階 |
代表取締役 | 近 暁 |