事業承継・引継ぎ補助金とは?利用条件や上限額について
規模の小さな事業者は、事業承継、事業再編等を契機とする新たな取り組みを補助する「事業承継・引継ぎ補助金」が利用できるかもしれません。
どんな場合に利用できるのか、いくらまで補助を受けられるのか、この補助金の概要をここで解説します。
事業承継や経営革新へのチャレンジへの補助
「事業承継・引継ぎ補助金」は次の3つの枠から構成されており、事業承継や経営革新に取り組む規模の小さな事業者を支援する制度になっています。
- 経営革新枠
- 専門家活用枠
- 廃業・再チャレンジ枠
この補助金では事業承継や事業再編、事業統合の促進、ひいては日本経済の活性化を図ることが目的とされています。
経営革新枠について
同補助金の「経営革新枠」は、事業承継・M&Aで事業を引き継いだ事業者が経営革新等を行うことを支援することを目的としており、事業者の生産性向上を図るため必要な費用の一部を補助する枠組みです。
例えば引き継ぎを行った後継者が経営革新に取り組むとき、新たな設備の導入や販路開拓のために経費を支出することになります。
その際の経費を一部同補助金により支援するのです。
利用条件
経営革新枠で補助金を受けようとするには、以下の条件を満たさなければいけません。
経営革新枠の利用条件 | |
---|---|
一定期間内に経営資源を引き継ぐこと | ・事業承継やM&Aを行うべき期間が定められるため、その期間中に実施する必要がある。 ・8次公募の場合だと、2019年9月17日~2024年9月16日までが「補助事業期間」。 |
事業承継後に経営革新等に取り組むこと | ・先代から引き継いだ経営資源を活用して経営革新に取り組む必要があり、さらに「デジタル化」「グリーン化」「事業再構築」のいずれかに資する内容でなくてはならない。 ・「経営革新」とは、新商品や新役務、新技術の開発などの新事業活動に取り組んで「経営の相当程度の向上を図ること」を指す。 |
なお、補助対象となる経費区分は次に掲げるものです。
- 設備費
- 原材料費
- 外注費
- 委託費
- 店舗棟借入費
- 廃業費
- 謝金
- 産業財産権等関連経費
- 旅費
- マーケティング調査費
- 会場借料費
- 広報費
上限額と補助率
経営革新枠における補助金の上限および補助率は次の通りです。賃上げの有無も関わってきます。
条件 | 賃上げ | 補助上限額 | 補助率 | |
---|---|---|---|---|
①小規模企業者 ②営業利益率低下 ③赤字 ④再生事業者等 のいずれかに該当 | 実施 | 800万円 | 600万円超~ 800万円相当部分 | 1/2以内 |
実施せず | 600万円 | ~600万円相当部分 | 2/3以内 | |
上記①~④該当なし | 実施 | 800万円 | 1/2以内 | |
実施せず | 600万円 |
※出典:8次公募のご案内
専門家活用枠について
「専門家活用枠」は、経営資源の引き継ぎに際しての専門家活用を支援するための枠組みです。
専門家に支払う報酬の一部を補助することで雇用を維持・創造し、地域経済の活性化を図る目的を持ちます。
後継者不在に悩む売手側、経営力強化をしたい買手側の双方に対して補助が行われます。
利用条件
専門家活用枠で補助金を受けようとするには、以下の条件を満たさなければいけません。
専門家活用枠の利用条件 | |
---|---|
補助事業期間内に相手方と契約を締結すること | ・所定の補助事業期間内に、基本合意書の締結、最終契約書の締結、そしてクロージングまでを済まして経営資源引き継ぎの実現をしないといけない。 |
委託先の専門家が「M&A支援機関登録制度」に登録されていること | ・中小企業が安心してM&Aに取り組めるようにするため、中小企業庁が「M&A支援機関に係る登録制度」を設けている。この制度で登録を受けた専門家を活用する必要がある。 ・M&A支援機関には、税理士や公認会計士、中小企業診断士、弁護士、司法書士などの士業やM&A仲介業者、金融機関、商工会議所などが含まれる。 |
なお、補助対象となる経費区分は次に掲げるものです。
- 外注費
- 委託費
- 廃業費
- 謝金
- 旅費
- システム利用料
- 保険料
上限額と補助率
専門家活用枠における補助金の上限および補助率は次の通りです。下限額が定められているという特徴を持ちます。
類型 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 |
---|---|---|---|
買い手支援類型 | 2/3以内 | 50万円 | 600万円以内 ※上乗せ額(廃業費)+150万円以内 |
売り手支援類型 | 1/2又は 2/3以内 |
※出典:8次公募のご案内
廃業・再チャレンジ枠について
「廃業・再チャレンジ枠」は、現在の事業を廃業するための経費を補助することで、その後新たにチャレンジをしやすくするための枠組みです。
法人の株主や個人事業主などが対象で、廃業後の「法人設立」「事業主として新たな事業の立ち上げ」などが補助対象の新たなチャレンジとされています。
なお、この枠組みは経営革新枠や専門家活用枠と一緒に申請(併用申請)することも可能です。
利用条件
廃業・再チャレンジ枠で補助金を受けようとするには、以下の条件を満たさなければいけません。
廃業・再チャレンジ枠の利用条件 | |
---|---|
一定期間内にM&Aを行うこと | ・2020年から交付申請期日までの間、M&Aに6ヶ月以上取り組むこと。 ・取り組み内容としては「事業承継・引継ぎ支援センターへの相談依頼」や「M&A支援機関との包括契約」「M&Aマッチングサイトへの登録」などが挙げられる。 |
補助事業期間内に廃業と再チャレンジに取り組むこと | ・廃業手続を完了させたうえで、新たに法人を立ち上げるなどの再チャレンジを始めなくてはならない。 |
なお、補助対象となる経費区分は次に掲げるものです。
- 専門家活用費や人件費などの廃業支援費
- 在庫廃棄費
- 建物や設備などの解体費
- 原状回復費
- リースの解約費
- 設備等の移転・移設のための費用
上限額と補助率
廃業・再チャレンジ枠における補助金の上限および補助率は次の通りです。
申請の種類 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 |
---|---|---|---|
再チャレンジ申請 | 2/3以内 | 50万円 | 150万円以内 |
併用申請 | 1/2又は 2/3以内 |
※出典:8次公募のご案内
最新情報のチェックが重要
事業承継・引継ぎ補助金を活用すれば、事業の引き継ぎやそれに伴う廃業、その後の取り組みなどにかかる費用負担を軽減することができるでしょう。同補助金を使い、その後生産性向上や売上高向上などの成果を出せた事例も実際に多くあります。
ただ、補助を受けるには定められた期間内に所定の取り組みを行わなければいけないなど、注視すべき条件がたくさんあります。
そこで細かな条件や申請の方法、スケジュールなどについては最新情報を追ってチェックしておくことが大事です。
KNOWLEDGE
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M&Aとは
「M&A」と言われても、まだまだ一般的にはよく知られていないのではないでしょうか?テレビや新聞の経済ニュースでは頻繁に目にするようにはなりましたが、まだまだ何のことやらわからない方が多いかと思います。
あるいは言葉の意味は人から聞いたり、本やネット等でなんとなく知っているが、具体的にどういうことなのか知らない人が多数かと思います。それも当然のことです。なぜなら、金融機関やM&Aを手掛けるコンサルティング会社以外の事業会社にとっては、M&Aというのは企業にとっての一大イベントでありますし、むしろほとんどの企業は全く縁のないことも多いからです。したがって、M&Aが一般的に知られるはずもないのです。
そこで、M&Aとは何なのか、またM&Aにはどのような手法があり、具体的にどのようなことなのかを、わかりやすくご説明したいと思います。
M&Aの正式な名称は「Mergers and Acquisitions」であり、M&Aとはこれを略した言葉です。Mergersというのは「合併」、Acquisitionsというのが「買収」のことであり、直訳すると「企業の合併と買収」となります。
一般的に「M&A」と言うと、二つ以上の会社を一つの会社としてくっつける、専門的に言うと複数の法人格を一つの法人格に結合する合併およびある会社の全株式を買い取ってしまう買収といった狭義のM&Aだけでなく、ある企業の特定の事業だけを譲渡する営業譲渡や、資本提携(100%ではない株式の取得・増資の引受)なども含めた、広義の資本的取引のことを包括しています。
MERIT&DEMERIT
M&Aのメリット・デメリット
売り手のメリット・デメリット
1. 従業員の確保
現在、日本の中小企業においては後継者不在により、いつまで事業が続けられるか悩んでいる中小企業経営者が多いです。後継者不在が続いた場合、廃業に追い込まれる企業も少なくないでしょう。そうなってしまうと、従業員やその家族、取引先に大きな影響を及ぼしてしまいます。こうした中小企業がM&Aを行うことで、会社を存続させることができ、ひいては従業員の雇用を守ることができます。
また、M&Aの相手先によっては、その会社のネットワークやノウハウを利用することで、再スタートを切ることができるので、後継者不在に悩んでいる中小企業にとっては、きわめて有効かつ迅速な解決を図るための選択肢となります。
2. 企業体質の強化につながる
M&Aを実行しようという買い手会社は、売り手会社に比べると、資金力、人材などの事業基盤の面で安定した企業となります。
M&Aで事業基盤のしっかりした企業との確固とした関係を築くことができれば、今まで不足していた信用力が補完され、資金調達が楽になることもありますし、また相手先のネットワークを利用することで販路を拡大することができるなど、いわゆる事業シナジーの活用ができ、収益力の強化につながることが期待できます。
3. 売り手の経済的メリット
たとえば後継者が不在のため、自社を廃業・清算する場合、現金や有価証券といった金融資産以外の資産である在庫や機械設備などは換金することが困難なばかりか、往々にして処分費用が嵩み、会社をたたむのに残金が残るどころか、追加での費用の支払いが出てしまう可能性も高いものです。
しかしながら、M&Aを実行する企業にとっては、そういった在庫や機械設備は今後の事業遂行にとって価値となる資産となるばかりか、場合によっては収益力を評価していわゆるのれん価値をつけて株式を買い取ってくれることがあります。
この場合、廃業・清算にかかる手間が、M&Aで軽減されるばかりか、場合によっては手元に残る現金が多くなることもあり、引退後の生活のために大きなメリットとなることでしょう。
もし詳細がお聞きになりたい方は、当社まで、ぜひお問い合わせください。

買い手側のメリット・デメリット
1. 既存事業の拡大や事業の多角化ができる
経済が成熟してくると、既存事業における市場規模の拡大というのは自然には見込めなくなるものです。したがって、自社の事業領域においては、他社の市場シェアを奪うほか売上の拡大が見込めなくなってきますが、これは簡単な話ではありません。
そこで自社の経営戦略やニーズにマッチした企業とのM&Aを実行することによって、自社の事業規模を拡大し、市場シェアを一気に拡大することが可能となります。
また、自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することができるというメリットがあります。

2. 時間を買うことができる
M&Aを実行することは、自社で一から経営資源である「ヒト・モノ・カネ」を投入して、新しい事業を立ち上げる時間を省くことができ、お金で「時間を買う」ことができるわけです。
3. 失敗のリスクを軽減できる
一般的に自社の既存事業の売上が伸び悩んでいる場合は、他の領域への進出、すなわち事業の多角化、新地域への進出という事業戦略を取ることが多いかと思います。しかしながら、ノウハウがない事業に新規に進出する場合は、よほどの事業シナジーがない限り、失敗のリスクが高くなります。
そこで、すでにある他業界の会社をM&Aすることで、対象企業の事業ノウハウばかりかすでに獲得しているマーケット・シェアを獲得することが できるというメリットがあります。
OFFICE
会社情報
当社は、会計士および税理士のネットワークをベースに設立された会社です。
これまで、多数のM&Aの経験に裏付けられた専門的ノウハウおよびネットワークを元に顧客企業にとって最適なM&Aを実現することが使命であります。
具体的なサービスとして、最も重要なものは、事業承継及び企業規模の拡大を目指している経営者様にとって、最も効果的なM&Aの相手先を見つけ、ご紹介する仲介業務であります。M&A仲介の難しい点は、なんといっても「相手先企業情報の入手及び両者のマッチング」です。
この仲介業務、すなわち出会いがすべてといっても過言ではありません。他社では、どうしても成約ばかりに目を向けて、成約するならどこでもいい、といったことがありますが、当社はこの仲介業務にもっとも力を入れ、またこの仲介において皆様の事業の発展に尽くしていきたいと考えております。
会社名 | 株式会社日本企業評価会計事務所(旧M&Aプロ株式会社) |
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設立 | 平成28年10月5日 |
事業内容 | 企業買収および合併の仲介業務など |
住所 | 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-8-10 宮川ビル4階 |
代表取締役 | 近 暁 |